「IT業界はやめとけ」と聞いても、業界全体を候補から外す前に、仕事内容と応募先の条件を分けて考える必要があります。納期や急な仕様変更で負担が増える仕事はあります。一方、IT分野には、システムの設計・開発、テスト、ネットワークの構築、運用など、異なる仕事があります。

学び続けることや、相手の要望を理解して説明することまで避けたいなら、慎重に検討したい業界です。ただ、今の会社の納期や配属に困っている人は、仕事内容への不向きとは別の問題かもしれません。この記事では、きつさの理由を確かめたうえで、入る・移る・別の仕事を選ぶための判断基準を整理します。

この記事のポイント
  • IT業界がきついと言われる理由と仕事ごとの違い
  • 学習・対人調整・AIの変化から考える適性
  • 未経験者が見るべき配属後の育成と担当業務
  • 求人票と面接で確かめる勤務・配属・賃金

「it業界やめとけ」と言われる理由と実態

残業や納期の厳しさは、受発注と仕事の進め方に関係する

残業や納期の厳しさは、受発注と仕事の進め方に関係する

残業への不安は、根拠のない噂として片付けられません。厚生労働省のIT業界向け解説では、所定外労働が発生する理由として、トラブルの緊急対応、顧客対応、仕様変更、無理のある納期・予算などが挙げられています。

本人が予定どおりに作業していても、顧客から求められる内容や計画の問題が負担に関係するということです。厚生労働省「IT業界の現状と課題」

また、開発の全部または一部を別の会社に委託し、元請け、一次請け、二次請けなどに仕事が分かれる多重下請構造になる場合もあります。厚生労働省は、こうした仕事で関係者のコミュニケーション不足が長時間労働の要因になると説明しています。

客先に常駐するかどうかに加え、誰が顧客と調整し、変更された内容をどう共有するかが大切です。

ただし、毎日すべてのIT職が同じように忙しいという説明ではありません。職業情報提供サイトのjob tagでは、受託開発のシステムエンジニアは基本的に週5日勤務で、土日祝日が休みのところが多い一方、納期が迫ると忙しくなり、休日や夜間に働くこともあるとされています。

通常時と納期前を分けて聞く必要があります。

応募先では、平均残業時間だけでなく、予定が崩れたときの対応を質問しましょう。「仕様変更が出たら、納期や担当人数をどう見直しますか」という聞き方です。厚生労働省の問題リストにも、短すぎる期間、人員不足、開発状況の共有不足、担当者の抱え込みが並んでいます。

「本人が頑張る」で終わらず、会社が調整する仕組みまで説明できるかを見たいところです。

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学び続けることと、人との調整を避けたい人には負担がある

IT業界への向き不向きは、今どれだけ詳しいかだけでは判断できません。受託開発のシステムエンジニアについて、job tagは、新しい技術や関連知識を自ら習得する姿勢、問題を発見して解決する力、状況の変化への柔軟性を求めています。

最初の勉強を終えた後も、担当する仕事に合わせて知識を増やす必要がある職業です。

しかも、仕事はパソコンに向かって完結するものではありません。たとえば要件定義は、顧客の仕事や困り事を理解し、どのようなシステムにするかを決める工程です。技術的に作れるかだけでなく、相手と認識を合わせる作業が含まれます。社内外の人との意見交換やチームワークも、同サイトが重視している点です。

参考リンク(外部サイト)job tag「システムエンジニア(受託開発)」shigoto.mhlw.go.jp

私も、IT業界を考える読者には、常に学習する意気込みがないと特にきついと伝えています。進歩の速い業界ですが、現実には古いシステムの運用や置き換えもあり、自分のやりたい技術だけを扱えるわけではありません。新しいものへの興味と、必要なものを学ぶ姿勢。その両方が問われます。私のIT・キャリアの考え

そのため、「今は分からないが、調べて理解し、相手に説明することには取り組める」という人は検討の余地があります。反対に、一度覚えた手順だけで働き続けたい、人との認識合わせをほぼなくしたいという希望は、少なくとも受託開発の仕事内容とは隔たりがあります。

話のうまさだけで自己判定せず、学習・説明・共同作業を受け入れられるかで考えてみてください。

「ITなら高収入」という期待だけで転職を決めない

「ITなら高収入」という期待だけで転職を決めない

収入を重視するなら、ITという業界名から期待するより、応募先から示される賃金の中身を比べましょう。特に固定残業代がある求人では、表示された月給と基本給を同じものとして扱わないこと。

厚生労働省は、固定残業代を除いた基本給、対象となる労働時間数と金額等の計算方法、対象時間を超えた分などの割増賃金を追加で支払う旨の明示を求めています。

比較するときは、基本給、固定残業代、賞与の条件、勤務時間を分けて書き出します。月給の見た目だけでは、どこまでが基本給で、どの部分が時間外労働に対応する手当なのかが分かりません。採用時には賃金の決定・計算・支払方法なども明示対象になるため、募集の説明と最終的な条件を照合することが大切です。

私自身、元のIT会社から地方の小さな会社へ移ったとき、年収が下がりました。やりたい仕事だったので取り組めましたが、トータルで考えると、その転職はやめた方がよかったと思っています。年収が下がる転職は、よほど「これをやりたい」と思える仕事でなければ、かなりきつい。これは私の場合の経験です。

やりたい仕事があることと、提示条件を受け入れられることは、別々に判断しましょう。「入社後に上がるだろう」という期待だけで決めず、まず今示されている条件で働けるかを考える。そのうえで、昇給の説明や担当する仕事を確かめる順番です。仕事内容への関心が強くても、賃金の内訳が曖昧なまま進める必要はありません。

AIで仕事は変わるが、業界全体が不要になるとは判断できない

AIがあるからITの仕事を選ぶ意味がない、と結論を急ぐ必要はありません。ただし、仕事内容が変わることは考えておきたい点です。IPAは、ソフトウェア開発におけるAIの活用場面として、要件定義、議事録管理、プログラムの生成、レビュー、テストやテストデータの作成を挙げています。

影響する範囲は、コードを書く作業だけに限りません。IPA「AIを用いたソフトウェア開発」

一方、IPAが2026年4〜6月に国内企業を対象として実施した調査の公表内容では、AIの導入は大企業を中心に広がるものの、活用や効果は業務効率化・迅速化が中心とされています。これは企業の活用状況を示す調査であり、IT職全体の仕事がなくなる時期を示したものではありません。

導入の広がりと、職業が不要になるという予測は分けて受け止めるべきです。

私の場合、最近はAIを使って顧客管理を効率化したり、Webサイトの管理・構築を早くしたりしています。その経験から、作りたい人の話をきちんとまとめ、設計できる人が、今のところ貴重になると思っています。また、ある程度ITを知らなければ、AIへの指示や出力の評価も難しいと考えています。

これから入る人は、「AIを使う会社か」だけでなく、AIを使った成果を誰が確かめ、どこまで自分が理解することを求められるかを聞いてみましょう。AIに任せる範囲が変わっても、何を作るのかを理解することや、結果を確かめることまで学習対象から外さない。

将来の雇用を断定するより、応募する仕事の中身を具体化する方が、入社の判断につながります。

「it業界やめとけ」と迷ったときの判断基準

開発・テスト・運用を分けて、担当する仕事から選ぶ

「ITエンジニア」という募集名だけでは、入社後の仕事を絞れません。システムの内容を顧客と決める仕事、設計に沿って作る仕事、テストを実施する仕事では、担当範囲が違います。まずは、何を担当し、どのような成果を求められるのかを見てください。

仕事の例仕事内容・体制の違い応募時に聞きたいこと
受託開発のシステムエンジニア顧客への聞き取り、設計、テストの確認、導入後の対応など最初に担当する工程と顧客対応の範囲
テストの実施担当テスト計画書に沿って動作を確かめる実施だけか、計画・設計にも関わるか
テストエンジニアテスト工程の計画・設計に深い知識や経験が求められる求められる経験と担当範囲
24時間対応の運用・監視の例東芝ITサービスでは、専門のオペレータと運用員が交代で監視応募先にも交代勤務があるか、具体的な勤務時間

運用・監視の行は、東芝ITサービスのリモート監視サービスという一社の体制の例です。運用という名前だけで夜勤の有無を決めず、応募先の始業・終業時刻や勤務の組み方を確かめましょう。また、同じ「テスト」でも、計画書に沿って実施する担当と、計画を設計する担当を混同しないことが大切です。

私の最初の仕事も、開発ではなく、ネットワークやサーバーの構築・設定が中心でした。大きな会社のグループ内で仕事を回す環境で、大きな仕事に関われた一方、個人的には歯車の一つになっている感じがあり、そんなに面白くありませんでした。

転職後にはWebサイトの設計・構築や顧客管理の仕組みづくりにも携わっています。同じITに関わる仕事でも、私の担当内容はかなり違いました。

未経験なら、採用の入口と配属後の育成をセットで見る

未経験なら、採用の入口と配属後の育成をセットで見る

未経験という理由だけで、IT業界への道が閉ざされるわけではありません。job tagは、資格がなくてもIT業界で働き始めることは可能で、実務に携わりながら学べる仕事もあると説明しています。ただし、経験が浅くても挑戦しやすい業務と、深い知識・経験が必要な業務は区別されています。

応募できることと、すぐに幅広い仕事を任されることは同じではありません。

受託開発のシステムエンジニアの紹介では、新卒入社の場合、入社後3〜4か月の新人研修を受け、その後も開発の現場で実践力や応用力を身に付ける流れが示されています。これは新卒入社についての説明です。

未経験の中途採用でも同じ期間・内容の研修があると受け取らず、自分の採用区分に適用される育成内容を聞きましょう。

質問したいのは、研修期間だけではありません。研修で扱う内容、配属後の最初の仕事、分からないときに質問する相手、仕事を確認してもらう方法です。現場で実践力を身に付ける過程まで含めて考えると、「研修あり」という一言だけで判断せずに済みます。

顧客対応や共同作業もある職業なので、技術の講義だけで仕事の準備が完結するとは考えない方がよいでしょう。

資格は、必要な知識を体系的に学び、スキルを外部に示す手段になります。一方、job tagはキャリアアップにはある程度の実務経験も求められるとしています。資格取得を目標にする場合も、その後どの仕事を経験するのかをセットで考える。

希望が開発なら、最初の配属で何を学び、その先にどんな担当を目指せるのかまで聞いておきたいところです。

求人票と面接では、配属・勤務・賃金の具体的な条件を確かめる

会社選びでは、「働きやすい」「成長できる」という言葉を、具体的な条件に置き換えて質問しましょう。厚生労働省は、募集時の明示事項として、仕事内容、就業場所、勤務時間、休日、賃金などを挙げています。仕事内容と就業場所には、入社直後だけでなく、将来の配置転換などを含めた変更の範囲も含まれます。

参考リンク(外部サイト)厚生労働省「労働条件の明示」check-roudou.mhlw.go.jp
確かめる項目質問の例
配属と仕事内容入社直後の担当業務と、変更される可能性のある範囲は何ですか
勤務地自社・顧客先のどこで働き、就業場所はどこまで変わりますか
勤務時間始業・終業時刻、休日、残業の有無はどうなっていますか
忙しい時期の対応納期や仕様が変わったとき、誰が人員や予定を調整しますか
育成配属後は誰に質問し、どのように仕事を確認してもらえますか
賃金基本給と固定残業代の内訳、対象時間、超過分の支払いはどうなりますか

なかでも、希望する職種名と、入社直後に任される業務の対応は大切です。「エンジニアとして採用」だけで終わらせず、設計、プログラム作成、テストの実施など、どこを担当するのかを聞きます。希望とは違う入口から始める場合も、その仕事を受け入れられるかを判断するための説明が必要です。

面接で説明を受けた後は、採用時の労働条件通知書などと照合します。厚生労働省は、重要な労働条件は書面で知らせることとし、明示されない部分や疑問があれば尋ねるよう案内しています。労働者が希望し、出力して書面にできるなどの条件を満たせば、電子メール等による明示も認められます。

なお、ハローワークに提出された求人票と面接の説明が違う場合は、ハローワークの窓口や求人ホットラインへ申し出る方法も案内されています。違いを見つけたまま、都合のよい方の条件で働けると考えて進めないこと。曖昧な点は、入社を決める前に解消しておきましょう。

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今つらい人は、業界・職種・会社のどこに原因があるか分ける

今つらい人は、業界・職種・会社のどこに原因があるか分ける

すでにIT業界で働いている人は、今の職場のつらさを、そのまま業界全体への不向きと決めないでください。厚生労働省の問題リストには、無理のある期間、人員不足、情報共有不足、現場の抱え込みなどが挙げられています。

こうした運営上の問題と、新しい知識を学ぶことや仕事内容そのものへの抵抗は、分けて考える必要があります。

主につらいこと次に比較する対象
納期、人員配置、相談や共有の不足別部署・別会社でのプロジェクトの進め方
担当する工程や業務への不満別の職種・工程で実際に担当する仕事
新しい知識の習得や対人調整そのもの希望する別職種で必要になる学習や対人業務
賃金や勤務地などの条件異動先・転職先から具体的に示される条件

IT分野の入口や進路は一つではありません。job tagは、働き始めてから適性が分かり、大きくキャリアを変える場合もあると説明しています。また、経験やスキルを持つ技術者が、下請け企業から顧客企業や元請け企業へ移るケースも紹介しています。

会社を変える、担当する仕事を変えるという選択肢も、今の不満に照らして検討できます。

ただし、移れば希望の仕事や待遇になるという保証はありません。今の職場で避けたいことと、次の仕事でも必要になることを並べ、応募先の説明と照らし合わせましょう。学習や調整を含めた仕事内容に納得でき、勤務・賃金・育成の条件も受け入れられるなら検討を進める。

仕事の中心部分が自分の希望と合わないなら、別の職種や業界も比較する。その順番で判断してください。

「it業界やめとけ」と迷ったときの判断ポイントまとめ

この記事のまとめです。

  • 残業の背景には、緊急対応、仕様変更、無理のある納期・予算などがあり、個人の適性だけで判断しない
  • 受託開発のシステムエンジニアでは、納期前に休日・夜間の仕事が生じることもあり、通常時と忙しい時期を分けて聞く
  • 今の知識量に加え、継続学習、説明、共同作業を受け入れられるかを考える
  • 高収入への期待だけで決めず、基本給、固定残業代、賞与の条件、勤務時間を分けて比べる
  • AIは要件定義やコード生成、テストにも使われるが、業界全体が不要になるとは判断できない
  • 開発、テスト、運用では担当内容が違い、職種名だけで仕事や夜勤の有無を決めない
  • 未経験でも入口はあるが、新卒向け研修の説明を中途採用へそのまま当てはめない
  • 研修期間だけでなく、配属後の仕事、質問相手、仕事を確認してもらう方法まで聞く
  • 仕事内容・就業場所の変更範囲も確かめ、面接の説明と採用時の書面を照合する
  • 今つらい人は、会社の運営上の問題と仕事内容への不向きを分け、異動・同業転職・別職種を比較する
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