「インフラエンジニアはやめとけ」という評判だけで、進路を諦める必要はありません。ただし、夜勤を避けたいのに交代勤務の仕事を選ぶなど、希望と配属先の条件が合わない応募は見送るべきです。判断の軸は、担当する仕事、勤務時間、経験を広げる機会の3つです。

インフラエンジニアは、情報システムの土台を設計・構築する仕事。機器を扱う仕事も、クラウド上で構築する仕事もあります。設計・構築と運用では働き方も異なるため、まず「何がきついのか」を分けて考えましょう。

この記事のポイント
  • 担当工程と配属先で異なる仕事の負担
  • 運用から調査・改善へ広がる経験の選択肢
  • 未経験者が確かめたい研修と初回配属
  • 勤務条件・収入・希望業務を軸にした進路判断

「インフラエンジニアやめとけ」と言われる理由と実際の違い

夜勤・休日対応はあるが、すべての仕事に共通ではない

夜勤・休日対応はあるが、すべての仕事に共通ではない

夜勤の有無は、最初に見たい条件です。たとえば、さくらインターネットのデータセンター運用の経験者募集では、3勤3休の2交代制を想定しています。勤務帯は10時〜22時30分と22時〜翌10時30分で、それぞれ所定労働時間10時間、休憩2.5時間。日中だけ働く仕事とは、生活時間が大きく異なります。

一方、厚生労働省のjob tagは、システムエンジニア(基盤システム)の勤務を「一般的に日勤」と説明しています。ただし、納期が近い時期やテスト工程では残業が多くなる傾向も記載されています。設計・構築を選べば、時間の負担がすべてなくなるわけではありません。

また、リモート勤務と日勤は別の条件です。さくらインターネットのサービス運用・SREの募集はリモート中心ですが、夜間を含む交代勤務も掲載し、日勤かシフト勤務かは本人のスキルや志向に応じた面談で決めるとしています。

夜勤を避けたい人は、勤務地の欄だけで判断せず、応募するポジションの勤務帯まで確かめましょう。

障害対応の責任が重いからこそ、支える体制が重要

システムを安定して動かし続ける仕事では、障害が起きたときの対応も役割に含まれます。さくらインターネットのデータセンター運用でも、機器の構築・保守に加え、障害対応、作業記録の作成、シフト間の引き継ぎを業務として挙げています。機器に触れる技術だけで完結する仕事ではありません。

責任の大きさが不安なら、採用面接では「障害時に誰へ相談できるか」「次の担当者へどう引き継ぐか」を聞いてください。同社の募集には、現場を率いる役割として、作業ミスなどの振り返りや再発防止策の実行もあります。目の前の復旧だけでなく、その後に手順や仕組みを見直す役割があるかも判断材料です。

落ち着いて状況を整理する姿勢や、関係部署への配慮も、同社が求める人物像に含まれます。「自分は緊張しやすいから無理」とすぐに決めるより、どこまで担当し、どの段階で周囲の助けを得られるのかを具体的に聞く。その回答を踏まえて、引き受けられる責任かを考えましょう。

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運用・監視で身につく経験は、担当範囲によって違う

「運用・監視ではスキルが身につかない」と一括りにするのも早計です。手順を実行する担当なのか、不具合の調査や手順の改善まで担当するのかで、経験する内容は変わります。求人の職種名より、業務内容の動詞に注目してください。

「確認する」「連絡する」に加え、「調査する」「構築する」「改善する」が自分の担当に含まれるかが大切です。

具体例として、さくらインターネットのサービス運用の募集には、不具合調査、監視基盤の構築、運用作業のコード化・自動化、開発チーム向けツールの開発があります。運用の仕事にも、仕組みを作り直す役割があるのです。ただし、この募集は経験者向け。

未経験で入社すれば、すぐ同じ仕事を任されるという意味ではありません。

技術を伸ばしたい人は、最初の配属に加えて、担当範囲が広がる条件を聞きましょう。設計・構築を希望するなら、運用から移った社員の例と、そのとき求められた経験まで。運用を続けたいなら、調査や改善を担う道も候補になります。

「何年いれば次に進めるか」だけでなく、「何をできるようになれば任されるか」を聞くのがポイントです。

年収は一律に低いわけではなく、区分と応募条件を見分ける

年収は一律に低いわけではなく、区分と応募条件を見分ける

年収を見るときは、未経験の入口、設計・構築、経験者の運用などを混ぜないことが大切です。job tagに掲載された設計・構築のスキルレベル別年収には、次の幅があります。出典は厚生労働省が2023年度に実施した委託調査で、金額は第一四分位から第三四分位の範囲。

最低額・最高額や、未経験者の初任給を示した表ではありません。

設計・構築のスキル区分年収の範囲
ITSSレベル1〜2420万〜620万円
ITSSレベル3450万〜700万円
ITSSレベル4500万〜780万円
ITSSレベル5以上600万〜950万円

運用でも、経験者向けのさくらインターネットのデータセンター運用募集は年収580万〜1,000万円を提示しています。ただし、運用・保守経験に加えて、業務改善の推進経験なども必要です。この金額を未経験入社の相場として使うことはできません。

また、job tagの職業ページに載る統計も、必ずしもその職業だけの数値ではないという注意があります。平均年収ひとつで「自分もこの額になる」と考えず、自分が応募できる求人の給与と担当業務を並べましょう。

給与を上げたいなら、希望額だけでなく、その求人で求められる設計、試験、改善などの経験との差を見る必要があります。

クラウドやAIで仕事がなくなると決めつけず、役割の変化を見る

クラウドが広がることと、インフラの仕事がすべて不要になることは同じではありません。job tagは、顧客の施設に物理サーバーを置く仕事が減少する一方、ECサイトやAIなどの分野でITインフラが求められていると説明しています。

仕事の内容は、ネット上のサービスを分析し、設定・調整してシステムを構築するものへ変化しています。

企業の募集にも、その変化が表れています。NTTデータ インフォメーションテクノロジーの募集要項は、従来のインフラ技術に加え、クラウドや環境構築の自動化技術の活用が求められると記載。一方で、必須経験の対象には、クラウドまたはオンプレミス環境の詳細設計を挙げています。

従来環境の経験をすべて捨てるという話ではありません。

AIについても、さくらインターネットのデータセンター運用募集では、AIを活用した継続的な業務改善を掲げています。これだけで将来の雇用数や待遇は予測できませんが、少なくとも、AI活用とインフラ人材の募集は両立しています。

不安への備えとしては、いま担当する作業の知識を土台に、設計、問題解決、自動化のどこへ経験を広げるかを考えたいところです。

「インフラエンジニアやめとけ」と迷ったときの選び方

向き不向きは、学習・調整・仕事の面白さで考える

向いているかを考えるなら、機械が好きかだけでなく、変化を学ぶこと、相手の要望を聞くこと、周囲と作業を進めることに目を向けましょう。job tagは、ネットワークやサーバーの知識に加えて、顧客との対話やチーム作業に必要なコミュニケーション能力、変化するクラウドの仕様を追うことを挙げています。

新しい知識を学ぶことや、手順を改善していくことに関心がある人は、そうした業務を含む職場を候補にできます。反対に、学習や関係者との調整をできるだけ避けたいなら、希望する仕事内容とのずれを慎重に考える必要があります。夜勤が難しい場合は、まず日勤の条件を探すこと。

勤務条件の不一致だけで、職種全体に向いていないと決める必要はありません。

私自身、最初はネットワークエンジニアとして、ネットワークやサーバーの構築・設定を中心に約6年働きました。大きな仕事に関われて勉強になった一方、グループ内で仕事を回す環境には、歯車の一つになっているような感覚もあり、個人的にはそれほど面白くありませんでした。

同じインフラの仕事でも、何を作るかに加え、誰と関わり、どこまで任されたいかを考えてほしいと思います。

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未経験者は、資格より先に研修と最初の配属を確かめる

未経験者は、資格より先に研修と最初の配属を確かめる

未経験から目指す道はあります。ただし、「未経験歓迎」という一言から、入社後の仕事まで決まるわけではありません。たとえば、SCSKサービスウェアの未経験者向け採用案内は、サポート業務から始める場合と、初めから開発・インフラ案件に携わる場合の両方を説明しています。

掲載された案件例が、そのまま自分の初回配属になるとは限りません。

同社の案内には、理解度に合わせた育成や、現場経験のあるトレーナーによる研修もあります。一方、キャリアの例は配属先や雇用形態によって異なるという注記付き。応募時には、募集全体の育成方針から一歩進めて、自分が受ける研修の内容、配属後の指導担当、最初に任される作業を聞きましょう。

構築を目指すなら、その希望をどの段階で相談できるかも論点です。

資格について、job tagは入職に特定の資格が必須とはしておらず、基本情報技術者などを関連資格として挙げています。ただし、個別求人の応募条件は別です。NTTデータ インフォメーションテクノロジーの経験者募集でも、所定の経験・スキルがあれば資格は必須ではない一方、設計や試験の経験を求めています。

資格の有無と、実務経験の要件を分けて読む必要があります。

学習を始める際も、応募候補の業務と必須・歓迎条件を見てから、学ぶ内容を決める順番がおすすめです。資格を取っただけで、希望する工程や待遇が約束されるわけではありません。研修で補える部分と、応募前に必要な知識・経験の境目を確かめてから準備しましょう。

求人票と面接では、自分の配属条件を具体的に聞く

会社全体の制度と、自分が働く現場の条件は分けて見ましょう。SCSKサービスウェアの採用案内でも、勤務時間は配属先プロジェクトに準じるとしています。「研修あり」「リモート可」「クラウド案件あり」といった表示に加え、内定を受けるポジションで何が適用されるのかを聞くことが大切です。

判断したい条件面接で聞く質問例
生活時間と両立できるか自分の配属予定先の勤務帯は何時から何時ですか。夜勤や勤務時間外の呼び出しはありますか
忙しい時期を許容できるか納期前やテスト工程の勤務状況はどうなりますか
障害時に相談できるか最初にどこまで対応し、誰へ引き継ぎますか。振り返りは誰が担当しますか
希望する経験を積めるか初回配属で任される作業は何ですか。調査・構築・改善にはどう関われますか
育成方針が自分にも適用されるか自分の雇用形態と配属先では、どの研修や指導を受けられますか

質問を全部同じ重さで扱う必要はありません。夜勤を避けることが必須なら勤務帯、構築経験が目的なら初回配属とその後の担当変更が優先です。まだ配属が決まらず回答できない場合は、いつ決まるのか、希望と異なったときに何を相談できるのかまで聞く。

外せない条件が曖昧なままなら、応募や内定承諾を急がない判断も必要です。

すでにきつい人は、担当変更・転職・職種変更を分けて考える

すでにきつい人は、担当変更・転職・職種変更を分けて考える

いま働いていてつらい場合は、「夜勤が合わない」「担当範囲が広がらない」「仕事そのものに興味が持てない」のどれが大きいかを書き出してみてください。夜勤が主因なら日勤の仕事、経験の停滞が主因なら調査や改善まで担う仕事が、比較する候補になります。仕事内容への不満と勤務条件への不満では、探す求人が違います。

現職で担当変更を相談するなら、希望する作業を具体的に伝えましょう。社外の求人を見る場合も、いまの経験で応募できるものと、追加の経験が必要なものを分けます。設計・構築の経験を求める求人に対しては、在籍年数だけでなく、実際に担当した設計資料、試験、問題解決の内容が問われます。

現職で希望する経験を積めるかも含めて比べたいところです。

私の場合、転職は1回で、インフラの仕事から、Webサイトやネットショップの立ち上げに関わる仕事へ移りました。やりたい仕事ではありましたが、年収は下がっています。「これをやりたい」という気持ちがあったから続けられたものの、それがなければ厳しかったと思います。

職種を変えるときは、興味と同じくらい、収入の条件も軽く扱わないでほしいです。

学習や顧客との調整など、仕事の中心にある役割自体が希望と合わないなら、別職種も比較対象になります。反対に、不満が特定の勤務条件や担当範囲に集中しているなら、インフラの経験を使いながら条件を変える道も検討できます。まず変えたい条件を決め、その条件に直接答える求人を比べるところから始めましょう。

「インフラエンジニアやめとけ」と迷ったときのまとめ

この記事のまとめです。

  • 職種名だけで避けず、担当業務・勤務時間・経験を広げる機会で判断する
  • 夜勤を含む運用の仕事がある一方、job tagではシステムエンジニア(基盤システム)の勤務は一般的に日勤とされている。ただし、納期が近い時期やテスト工程などでは残業が多くなる傾向がある
  • リモート勤務でも夜勤の可能性があるため、勤務帯は勤務地と分けて見る
  • 障害対応が不安なら、相談先・引き継ぎ・振り返りを担う体制を質問する
  • 運用にも調査・構築・自動化を担う役割があるが、経験者向け求人の仕事内容を未経験者の配属保証と捉えない
  • 年収は担当業務と応募条件をそろえて比べ、統計の対象や数値の範囲も確かめる
  • クラウドやAIで職種全体がなくなると決めつけず、設計・問題解決・自動化へ役割を広げる方向を考える
  • 向き不向きは、学習や関係者との調整への関心と、自分が面白いと感じる役割から考える
  • 未経験者は資格だけに頼らず、自分に適用される研修・初回配属・担当範囲が広がる条件を聞く
  • 現職がきつい場合は変えたい条件を明確にし、担当変更・転職・別職種を収入条件も含めて比較する
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